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  • はじめてのVR・AR

    2016.11.30
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    introduction

    2016年がVR元年と呼ばれるのは、ヘッドマウントディスプレイやそれを動かすパソコンのスペックなどVRに必要な環境が一通りそろうからです。それに加えてPSVRも発売され、一般家庭にも普及が広がり一過性のブームでは終わらないと見られています。
    さらに業界内でARを実現するレンズの開発を進める動きもあり、VRの次はARのビッグウェーブがくるとも言われています。なにかと一緒に取り上げられることの多いVRとAR
    この記事ではVRをメインに、ARについても紹介します。

    目次

    1-1. VRとは
    1-2. VRの歩み
    1-3. VRの特徴
    2-1. ARとは
    2-2. ARの歩み
    2-3. ARの特徴
    3-1. VRARの違い
    4-1. 2016年に注目されたVRサービス
    4-2. VRの今後の可能性
    5-1. まとめ

    1-1.VRとは

    VRとはVirtual Realityの略で、日本語では「仮想現実」という訳が定着しています。
    この訳は本来の意味からするとミスリードで、実際Virtual Realityの「virtual」は仮想ではなく「実質的な」という意味。
    仮想とは仮に考えることで、VRは現実世界ではないものの、実質的には現実世界と同じ体験ができることです。
    日本でこの訳語がしっくりきているのは、欧米とVRの捉え方が違うため。日本ではPSVRで発売された「サマーレッスン」のように、実体のない仮想キャラクターとコミュニケーションをとるコンテンツに馴染みがあり、仮想現実という言葉が当てはまる機会が多いのです。

    • PSVR

    • PSVR 「サマーレッスン」画面イメージ

    1-2. VRの歩み

    • VRという概念はすでに1960年代に確立していました。
      アメリカの計算機科学者アイバン・サザーランドが、ブラウン管を使った最初のヘッドマウントディスプレイを開発。これは「The Sword of Damocles(ダモクレスの剣)」と名づけられ、両眼で立体視を行う現代のヘッドマウントディスプレイと原理は同じものでした。

      この後しばらくVRの研究が行われない時代が続きますが、VRは1990年代に一大ブームを巻き起こします。VRという言葉が生まれたのもこの頃です。

      1989年にジャロン・ラニアーが設立したベンチャー企業「VPL Research」が、データグローブの紹介でVRを使い注目が集まります。翌年1990年にはマサチューセッツ工科大学が中心となり、サンタバーバラ会議を開催。VRの研究が加速しました。
      さらに大手企業「Apple」もパノラマ画像が体験できる「QuickTimeVR」を発表。日本企業もVR開発に参入し、任天堂は3Dゲーム機「バーチャル・ボーイ」をリリースしましたが、当時は十分な技術が確立されておらずVRに重要な没入感が実現できませんでした。一般には普及せずブームは過ぎ去ったのです。
      しかし研究は続き2012年、クラウドファンディング「Kickstarter」に視野角110度を実現した「Oculus Rift」が登場します。2014年にはFacebookがOculusを買収、VRの可能性に様々な企業が注目し始めたのです。
      Oculus以外にもHTC VIVEやPSVRとハイエンドVRの市場参入が続き、スマホを使って手軽にVRを体験できるモバイルVRも劇的に成長していきます。
      技術の発展でVRはいよいよ実用レベルになり、VR元年といわれる2016年に第二次VRブームが到来したのです。

    • 「The Sword of Damocles(ダモクレスの剣)」

    • QuickTimeVR

    • バーチャル・ボーイ

    • Oculus Rift

    1-3. VRの特徴
    • VRの特徴は、視覚、聴覚、触覚といった人間の五感に働きかけて「現実世界と実質的には同じ空間」を作り出すことです。
      現在の技術では頭に装着するヘッドマウントディスプレイを使って、目の前に映像を映し出しVR空間を実現していますが、決して最終形態ではありません。

      VRが生み出すその場にいるかのような感覚は「センス・オブ・プレゼンス」と呼ばれます。精巧に表現されたVR空間を没入感が高いとよく表現されますが、没入感を超えた感覚がプレゼンスです。
      センス・オブ・プレゼンスを言葉で表現すると、頭でVRであると分かっていても、体が別世界に存在していると信じてしまう感覚。研究者が目指す「現実世界と実質的には同じ空間」を感じるにはセンス・オブ・プレゼンスが欠かせません。
      VR体験者は3Dで表現された音の遠近と画像のリアルさを感じることで、まるで別空間にいるような体験ができるのです。

    2-1. ARとは

    ARはAugmented Realityの略で、日本語に訳すと「拡張現実」という意味です。実際の景色や地形といった現実世界の情報に、別の情報を加えて現実世界を拡張表現します。 例えば最近、社会現象になっている「ポケモンGO」が代表的なARゲームです。目の前に広がる風景をスマホのカメラを通して写し、その中にデジタル情報であるポケモンを加え、現実世界を拡張しています。

    2-2. ARの歩み

    ARの歴史もVRと同じく、1960年代のアイバン・サザーランドの研究のときに始まったと言われています。
    当時彼が作ったヘッドマウントディスプレイはシースルーで、現実世界をシャットアウトしてCGだけを見ればVR、ヘッドマウントディスプレイをシースルーにするとARを体験できたのです。
    概念は存在していましたが、ARという用語が生まれたのは1990年代初め。当時ボーイングで研究職に就いていたトーマス・コーデル教授が、発表した論文の中でARについて言及したのです。

    VRと同様に、1990年代は本格的にARの研究が始まります。コロンビア大学ではレーザープリンターの修理のため、筐体内の構造を赤いCGで現実世界に表示させる研究を行ないました。さらに1992年にはロボットアームを操作してARを体験する「仮想フィクスチャー(Virtual fixture)」が開発され、適切に機能する初めてのARシステムとして広く認められます。
    2000年以降はARで楽しめる飛び出す絵本や、任天堂のARを使ったゲームなどが登場。スマホや携帯ゲーム機との相性の良さから、子供と子を持つ親世代にも広く認知されるきっかけとなりました。

    2-3. ARの特徴
    • ARは私たちが見ている現実世界にデジタルの情報を表示できるため、広告やビジネスとの相性が良いことが特徴です。特によく使われているのはチラシやカタログとARを組み合わせた技術。
      チラシに専用アプリをかざすと製品が立体的に表示され、消費者はリアルに製品を体感でき、このアイデアを多くの企業が取り入れています。
      IKEAが提供する「IKEA カタログ」はさらに進んだAR体験が可能。製品が立体で表示されるだけでなく、アプリを通して製品を現実世界の空間において、家具がどのように部屋に収まるかシミュレーションすることができます。
      こういったことから、ARは「リアル空間のAdwords」と表現されることがあります。

    3-1. VRとARの違い

    VR and AR are often mentioned together but the experience per se is completely different.
    VR creates the very space artificially and allows the human to immerse into this VR space. While AR displays digital information to the real world by overlaying the real and virtual information.

    一緒に取り上げられることが多いVRARですが、体感できることは全く異なります。
    VRは空間そのものを人工的に作り出し、そのVR空間に人間が入り込む技術。一方でARは現実世界にデジタル情報を映しだし、現実と仮想をオーバーレイさせる技術です。

    再度ARゲーム「ポケモンGO」を例に考えてみましょう。ARは実際に存在する街の中をスマホ片手に歩きまわり、スマホを通して表示されたポケモンをゲットします。これがVRになると、ヘッドマウントディスプレイを装着して表示される人工的に作られた世界を歩き回りポケモンをゲットすることになるでしょう。
    人工的な世界で何ができるかと、現実世界で何ができるかの違いが、VRとARの大きな違いです。

    • VR イメージ

    • AR イメージ

    4-1. 2016年に注目されたVRサービス

    VR元年と呼ばれる2016年は、PSVRが発売されたこともありVRを手軽かつ強力に体感できるゲームといった、エンターテインメントに関するサービスが注目を集めました。 VRブームの火付け役であるOculus Riftは、もともとゲーム用デバイスとして開発されました。さらにヘッドマウントディスプレイ三大勢力の1つHTC VIVEは、世界最大級のゲームダウンロード販売プラットフォーム「Steam(スチーム)」と提携していて様々なVRゲームを提供しています。

    日本でVRゲームが注目されているのは、なんといってもPS VRの存在が大きいです。深海でサメに遭遇する「THE DEEP」は日本のテレビ番組で何回も取り上げられました。 2016年にもう1つ注目を集めたのがVRのテーマパークです。 アメリカ・ユタ州にあるVRテーマパーク「The VOID」は本格的なVRゲームを提供しています。連携をとって謎解きやモンスターの討伐を行い、VR体験を仲間と楽しめます。 さらにHTCも台湾・台北市に「Viveland」を期間限定でオープン。日本でも株式会社ナムコが「VR ZONE Project i Can」を期間限定オープンし、サンシャインシティではVRアトラクション「TOKYO弾丸フライト」と「スウィングコースター」が提供されました。販売されている家庭用のヘッドマウントディスプレイでは、いまのところ1人でしかVRを体験できません。しかしテーマパークは複数人でVR体験を共有できます。家庭用にはない大きな魅力となり、世界各地でイベントやテーマパークが開催されているのです。

    • THE DEEP 画面イメージ

    • The VOID

    4-2. VRの今後の可能性

    2016年はこれまで企業レベルでしか行われていなかったことが、VRゲームなどを通して一気に消費者へ広がりました。VRに触れる一歩として実際に体感しやすく、操作性の高いゲームが目立っていましたが、これからはVRが私たちの生活の一部に入り込む傾向にあります。

    Everyday life cannot be thought without shopping; therefore, several companies have announced to develop shopping services using VR. Psychic VR Lab from Japan is preparing to release the VR shopping platform “STYLY” for fashion in 2017.

    日常を送るうえでなくてはならないものは買い物ですが、VRを使ったショッピングに複数の企業が名乗りを上げています。
    日本ではPsychic VR Labが、ファッション向けVRショッピングプラットフォーム「STYLY」を2017年のリリースに向け取り組んでいます。
    海外でも取り組みが進められていて、大手ECサービスを運営する「eBay(イーベイ)」は「マイヤー社」と提携して、2016年5月に世界初のVR百貨店を立ち上げました。試験的な側面を持ち、オーストラリアのみで提供されているサービスですが、実際にVRでショッピングできる日が近いことを予感させます。
    他にも中国大手企業「アリババ」と通販サイト「Amazon(アマゾン)」もVRショッピングに乗り出していて、2017年はVRショッピングが話題になりそうです。
    開発企業が口をそろえていうのは「将来的にVRでショッピングするのが当たり前になる」ということ。そうなればショッピングの地域格差が少なくなり、売上増加も見込めます。VRが経済を活性化させる日も近いかもしれません。

    5-1. まとめ

    2016年はVR元年であるとともに第二次VRブームでもあります。第一次VRブームの1990年代に多くの研究が進められましたが、VRのセンス・オブ・プレゼンスを満足に感じることができるほどの技術力がなくブームは終息しました。
    現在はVRの没入感を実現する十分なヘッドマウントディスプレイが登場し、UnityなどVRコンテンツを作成するプロットフォームも充実しています。アセットといった一から制作しなくても既存の3Dモデルを購入するシステムで予算を抑えることができ、開発側はいくらかVRを作りやすい環境が整いました。
    消費者の需要が増し、開発側の環境が整い、今後さらにVR業界は成長していくことでしょう。